今週のセミナーはパッションフルーツ果実の酸度に関する研究発表を行います。


わが国で経済栽培されている果実は酸度が高いために食味が悪いものが多く、生産拡大の障害となっています。酸度低下についての実験を本年度の4月〜7月にかけて行い、いくつかの知見が得られましたので報告いたします。


<実験1> 落果試験
パッションフルーツは収穫後の追熟により酸度が低下して食味がよくなります。一方で、収穫時期を迎えた果実は離層を形成して容易に落果し、その際の衝撃により追熟が阻害され(減酸阻害、糖度低下)、果実品質の低下を招くとされています。

本試験では落果距離と品質低下(減酸阻害、果実表面・果実内部への損傷、糖成分の変化、果汁の溢出など)の関係についての知見が得られました。

<実験2> 夏実の酸度変動調査
冬実は夏実よりも酸度が高いことが知られています。気温と土壌湿度が高いほど冬実の酸度は低下することが知られていますが、過去の研究では酸度は3程度までしか下がりませんでした。品質が良いとされる酸度は2以下であるので、冬実の品質向上が大きな課題となっています。これまでに冬実の果実成熟に伴う酸度変動についていくつか知見が得られていますが、夏実については知見が得られていません。

本試験では夏実と冬実の酸度変動を比較することで、冬実の酸度が高い理由を探ることを目的としました。試験からは夏実の果実の成熟に伴う酸度変動についての知見が得られました。また、これまで主要な酸成分はクエン酸であるとされてきましたが、他の酸成分についても調査しました。