来週のセミナーは「異なる高さから落果させたパッションフルーツ'サマークイーン'の酸度低下に及ぼす影響」というタイトルで行います。今年の夏に行った落下試験の結果を、熱農学会の発表練習を兼ねて報告したいと思います。

[目的] パッションフルーツは仕立て方によって着果させる高さが異なる. 生垣仕立てでは90cm前後の高さ, 棚仕立てでは180cmの高さに着果させる. 一方, 沖縄県で一般的なつり下げ型垣根整枝では90cm前後の高さに着果させる. 果実は成熟するとこれらの高さから落果する. 収穫された果実は10日ほどの追熟期間を経て酸が低下し食味が向上するが, 落下した果実はその後の酸の低下が進まないといわれている. そこで180cmまでの異なる高さから果実を落下させ, 追熟後の果実品質を比較した.

[材料および方法] 2006年9月に挿し木繁殖させた鉢植のパッションフルーツ(Passiflora edulis × Passiflora edulis f. flavicarpa) 'サマークイーン'26個体を京都大学農学部のビニル温室で栽培し, 2007年5月上旬から6月上旬に人工授粉し結果させた. 地表への落果を防ぐために収穫期の果実をタグで固定し, 離層が形成された果実を毎朝収穫した. 実験には6月30日〜7月23日に収穫した果実180個を供試した. 収穫直後に30・60・90・180cmの高さから人為的に落下させた処理区に対し, 落下の衝撃を与えなかった区を対照区とした. これらの果実を25℃で10日間追熟させた後, 果汁の滴定酸度 (クエン酸換算)・可溶性固形物含量 (Brix)・果汁量を測定し, 官能試験も行った. また, 追熟中の果実の呼吸速度や, 棚持ち期間を調べた.

[結果および考察] 対照区と比較して, 30cm区・60cm区では酸度に差がみられなかったが, 90cm区・180cm区では有意に高く, 落下距離が大きいほど酸度が高い傾向がみられた. Brixは対照区と落果させた処理区で差がみられなかった. 糖酸比 (Brix / 酸度) は, 対照区と比較して, 90cm区・180cm区で有意に低くなった . 対照区・30cm区・60cm区では果汁の漏出はほとんどの果実で確認できなかったが, 90cm区・180cm区では漏出がみられた.追熟後の果汁の量は, 落下距離が大きいほど少なくなる傾向がみられた. また, 落下距離が長くなるほど, 棚持ち期間は短くなった.


これらの結果から, 90cm以上の高さから落果させると, 酸の低下が進まず糖酸比が低くなり, 果汁量が少なくなり, 棚持ち期間が短くなるため, 果実品質が低下することがわかった.

果実の呼吸速度と官能試験の結果については, セミナーで発表します.


よろしくお願いします.