タイ東部の商業マンゴスチン園の低pH土壌におけるAl飽和度と果実障害への影響
Aluminum saturation and its effect of on flesh disorder of
mangosteen fruit in low pH soils of southeast Thailand
マンゴスチンの果実品質を低下させている障害の症状として、「ガラス果症」と「ガム果症」と呼ばれる2種類の果実障害が知られている。「ガラス果症」は果肉が半透明になって硬くなり、さらに糖度が低下する症状である。一方で、「ガム果症」は黄色い乳液が果肉に入り食味を著しく害する症状である。両者は果実の商品価値を著しく低下させる。このことからマーケティング上の問題、栽培上の課題となっている。障害果症の発生の原因はいくつか報告されているが、その機構は明らかになっていない。
主要な生産地であるタイ東部の土壌はpHが低く、肥沃度もまた低い。一般的に、このような酸性土壌では土壌酸性障害が起こりやすい。マンゴスチン園の圃場においても土壌酸性障害が起きているかもしれない。土壌酸性障害のうち、とくに熱帯地域で多くみられるアルミニウム過剰障害は、作物の生育を阻害する最大の要因であると報告されている(Pavan
et al., 1982)。アルミニウム過剰障害は、根の伸長を抑制することが知られている(Hayashi
et al., 1989)。これによって養分の吸収阻害が引き起こされる。アルミニウム過剰障害によってカルシウムの欠乏障害(カルシウムの吸収阻害)が引き起こされることが知られている(低pH土壌と植物P77)。
カルシウムの欠乏障害によって果実障害が引き起こされることが知られている(N.V.Hue,
2004; Orimoto, 2003)。熱帯果樹においても、Ca及び土壌の無機成分が果実障害を引き起こすことが知られている(Silvie
et al., 1993; Kanda et al., 2001; Orimoto, 2003)。これらのことから、ガラス果症の発生の機構にアルミニウム過剰障害が関与している可能性に着目した。
そこで本研究では、ガラス果を引き起こすと考えられる可能性のひとつを検証することを目的とした。マンゴスチン園の土壌がアルミニウム過剰であるかどうかをアルミニウム飽和度から調査し、アルミニウム過剰障害がガラス果症を引き起こす可能性について検証した。