チェリモヤの人工受粉後異なる温度条件下での受精に要する時間の違い


Effect of temperature on required time for fertilization after hand pollination in cherimoya (Annona cherimola)


チェリモヤ(Annona cherimola Mill.)はバンレイシ科(Annonaceae)に属し、果実は世界三大美果に数えられるほど美味である。原産地は南米ペルー・エクアドルのアンデス高地であるとされ、1年を通して温和で開花結実期には降雨があるような気候が栽培に適していると考えられている。花は雌雄異熟の雌芯先熟性の両性花であるため、1つの花だけでは受精がおこなわれない。原産地では虫媒で受粉が行われるが、日本には有効な訪花昆虫がおらず、安定した着果を得るためにも人工受粉が必要である。効率よく人工受粉を行うためには生殖器官の稔性の変化とメカニズムを知ることが必要である。花粉の稔性に関しては様々な報告がなされてきたが、雌性器官(柱頭や、花柱、子房、胚珠)に関するものは少ない。これまでの報告で、柱頭に関しては、 柱頭分泌液の消失が着果率を低下させ人工受粉が成功しない要因となっていることが示唆されているが、子房や胚珠に関する研究はほとんどない。受粉から受精までに要する時間は4〜6時間程度であったことが報告されているが、温度や湿度等の条件による違いは明らかにされていない。温度条件の変化によって受粉から受精に要する時間がどのように変化するのかを明らかにし、着果に最適な受粉後の温度条件を知ることで着果率と果実品質の向上が期待できる。

そこで、雌性器官内での花粉管伸長速度が温度条件によってどのような影響を受けるのかを調べるために、受粉後の花に温度処理を行い蛍光顕微鏡下で花粉管を観察した。 花粉管の伸長は20℃〜30℃の間で良好で、27℃の条件下で最も早く胚嚢まで到達した。また温度条件ごとの受精までに要する時間をそれぞれ散布図から回帰直線をもとに推定した。