〈タイトル〉
北タイ山岳地帯カレンの農業における自給作物栽培の位置づけ
〈発表要旨〉
北タイ山岳地帯に住むカレンは、山斜面を利用した伝統的な農業を行いながら自給自足の生活を営ん
できた。しかし、20世紀の中頃までは、換金作物栽培の導入に消極的であった
(Delang, 2003) カレン
社会にも、ここ10〜20年の間で、市場経済の影響により徐々に換金作物栽培は導入されていった。現在
では、カレン社会において現金収入源としての換金作物栽培は欠くことのできないものとなりつつある
。
しかしながら、現在もカレンの村では主食であるコメを自給しており、自給作物であるイネの栽培は
彼らの農業にとって重要である。私は、2005年 (去年)
の調査を通じて、換金作物栽培が導入されたカ
レン社会において、自給作物栽培は彼らにとってどのような位置づけになっているのかに興味を持った
。
そこで、本研究では、まず、換金作物栽培が導入されたカレンの農業において、栽培作物の選択がど
のように行なわれているのか、どのような嗜好性があるのかを分析したい。次に、自給作物栽培と換金
作物栽培に対する村人の意識の違いを、農事暦、農耕儀礼、労働交換、そして聞き取り調査による村人
たちの声から検討したい。そして、自給作物である稲の位置づけについて考えることから現在のカレン
の農業がどういうものであるかを捉えたい。