タイトル:台湾原住民におけるキダチトウガラシの呼称及び利用の違いについて
発表者:山本宗立
要旨:台湾におけるキダチトウガラシの情報が非常に少ないこと、また手元のキダチトウガラシコレクションの中に台湾で採取した系統がないことを理由に、台湾で(特に台湾原住民に着目して)キダチトウガラシの調査をおこなった。台湾の北部地域ではキダチトウガラシはほとんど利用されず、山胡椒が香辛料としてよく利用されていた。一方中南部地域では、キダチトウガラシが香辛料としてよく利用され、集落内や森の周縁部にキダチトウガラシが自生していた。次に、北部地域におけるトウガラシ属の呼称が、ショウガや山胡椒の現地名から由来していたのに対し、中南部地域におけるトウガラシ属の呼称は起源がわからなかった。特に、トウガラシ属を好む集団として知られるアミは、10種類ほどの呼称をトウガラシ属に対して使用していた。以上の調査結果から考えるに、トウガラシ属が香辛料として重要ではない地域では、トウガラシ属の呼称はすでにあった香辛料の名称(ショウガや山胡椒)から拝借するのにとどまる。それに対し、トウガラシ属の利用頻度が高い地域では、ショウガや山胡椒などの現地名から名称を拝借せず、独自の呼称をトウガラシ属に与え、名称も多岐にわたるのではないか。