タイトル
部分的な高温処理が植物の生理活性に及ぼす影響

要旨
植物は生育期間中、病原菌等の生物的ストレスと高温、乾燥、湛水等の
非生物的ストレスを受けており、ストレスを受けない理想的な条件で生育
できる可能性はほとんどない。そのため作物における生産性の向上のため
にストレス応答を理解することは重要である。場合によっては同時に複数
のストレスにさらされているが、その中でも高温によるストレスは作物の
収量を制限する大きな要因となっている。
通常の生育環境とは異なる環境におかれた植物では、遺伝子発現や酵素反
応などを制御することによってその環境変動を乗り切ろうとし、植物は一
度高温にさらされると高温耐性を獲得すると報告されている。
また、植物体の一部分にストレスを受けると、その周囲だけでなく全身に
抵抗性を発現することが報告されている。例えば組織の一部が病原菌に感
染すると、その周囲だけでなく全身に抵抗性を発現することがよく知られ
ている。この抵抗性誘導機構は、全身獲得抵抗性(SAR)と呼ばれ、次に訪れ
るストレスに対して抵抗しやすくするという、動物における免疫に似たシ
ステムであると考えられる。
そこで本研究では高温耐性と病害抵抗性との関連に注目し、2つに共通の機
構があるのではないかと考え、植物が部分的な高温にさらされたときにも、
全身に高温耐性を発現するかどうかを、光合成活性を中心に検証した。