肥料の窒素形態に着目したパッションフルーツの施肥実験
パッションフルーツは生育が旺盛なため、多量の肥料を必要とする。肥培管理の良し悪しは、大きく生産性に影響する。
その一方で化成肥料を多用すると、枯れやすいとも言われている。そのために、堆肥を中心とした施肥を行う農家もある。しかし、これまでにパッションフルーツの施肥実験は、多くはない。また化成肥料の害作用について言及したものはなく、その詳細については分かっていない。
またこれまでの施肥実験で、肥料の窒素形態(硝酸態窒素:
NO3-N、アンモニア態窒素: NH4-N)に着目したものはない。
これまでに発表者は2005、2006年にNO3-N、NH4-Nのパッションフルーツの生育への害作用を明らかにする目的で施肥実験をおこなってきた。
これらの実験からパッションフルーツに過剰にNH4-Nを施用することで、NH4-Nの過剰害と思われる深刻なネクロシスおよび、著しい落葉が発生することが分かった。またパッションフルーツに過剰にNO3-Nを施用すると、NO3-N過剰施肥にともなった土壌pHの上昇や、K吸収の過剰などが引き金となって、要素吸収阻害がおこり、クロロシスが発生したと考えられた。
一方で施肥窒素濃度が同じであってもNH4-NとNO3-Nを混合して施用すれば、障害は発生しないということが分かった。
しかしこれらの実験での施用した液肥は、NH4-Nのみ、NO3-Nのみ、またはそれらを1:1で混合したものの3種類しかなかった。したがってどの程度の割合でNH4-NとNO3-Nを混合するのがパッションフルーツの生育に適しているのかは分からなかった。また施用した液肥の窒素濃度は100mMという非常に濃いものであった。したがってこれらの実験で発生した障害はどの程度の濃度で問題になるのかについては分からなかった。
したがって本年の実験は、窒素形態の比率をNH4-N:NO3-N=4:0、3:1、2:2、1:3、0:4の5水準を設定した。また施肥窒素濃度は5、10、25、50mMの4水準を設定して実験をおこなった。