〜研究内容〜
様々な日長がキダチトウガラシの

花芽分化に及ぼす影響

〜研究内容〜

1. 形態的特徴の違い

2. アイソザイム分析

3. 種子の休眠性

4. 日長反応性1

5. 日長反応性(作成中)

6. 台湾・バタン(作成中)

 様々な日長がキダチトウガラシの花芽分化に及ぼす影響を調べましたので、ここで紹介したいと思います。この論文の内容は生物環境調節(Environment Control in Biology)に掲載されていますので、詳しく御覧になりたい方は参照してください。

研究結果

材料と方法
 キダチトウガラシ(Capsicum frutescens L.)の小笠原諸島系統と南西諸島系統、そしてトウガラシ(C. annuum)のタカノツメ(C. annuum cv. ‘Takanotsume’)の日長反応性について調べました。日長が6h、9h、12h、15h、18h、21h、24hの7処理区を設けました。25℃に調節した環境制御室(ファイトトロン)にて夜間は補光をおこないながら実験しました(Fig. 1)。

Fig. 1. Experiments were conducted in a phytotron.


結果と考察
 6h9h12h15h18h21h24hの全ての周期においてトウガラシ(C. annuum cv. ‘Takanotsume’)の花芽は正常に分化し開花に至りましたが、キダチトウガラシの小笠原諸島系統は15h18h21h24hの光周期において花芽分化は起きるものの正常に花芽が発達せず落蕾するものが多く(Fig. 2)、正常に発達したものも開花に至るまでの日数が非常に長くなりました。また、南西諸島系統は15h18h21h24hの光周期では実験期間内に花芽分化が起きませんでした。以上の結果から、長日条件ではキダチトウガラシの花芽の分化や発達が阻害されること、そして日長に対する反応がキダチトウガラシの種内で一様でないことが明らかとなりました。

Fig. 2. Flower bud abortion under long day photoperiods. (A) Flower bud differentiation was observed at first, then (B) buds aborted under long day photoperiods.



 植物には短日植物や長日植物と呼ばれるものがあります。短日植物とは日照時間が短くなると花をつける植物のことで、アサガオが有名です。僕は小学校のころに学校でアサガオを栽培したことを覚えています。逆に長日植物は日照時間が長くなると花をつける植物 のことで、アブラナ科の植物が有名です。春の「菜の花畑」もその結果ですね。

 植物の栽培化が進むとこのような日長反応が鈍くなることが知られています。つまり、いつでも(季節とか関係なく)作物の収穫をおこないたいという人間にとっては日長反応性が邪魔になります。例えば、タイ料理でおなじみのカメムシ臭のあるパクチー(コリアンダー、香菜、Cariandrum sativum L.)は量的長日植物です。やっと日本が暖かくなってきて、さあそろそろパクチーを植えるぞ!とやってみたところで、すぐに花が咲いてしまい、利用したい葉っぱの収穫が微々たるものになってしまいます・・・(大好きなのに)。

 さて、トウガラシ属の植物はもともと短日植物として知られていますが、栽培化の進んだトウガラシ(C. annuum)の品種群は24時間日長下(自然光+補光)でも問題なく開花・結実に至ることが報告されています。場合によっては、自然光で栽培するよりも24時間日長下で栽培した方が栄養成長・生殖成長ともに促進されるという報告もあります。今回の実験でも、栽培化の進んだトウガラシの品種(タカノツメ)で同様のことが確かめられました。しかし、キダチトウガラシの小笠原諸島系統・南西諸島系統はともに長日条件で花芽の分化や発達が阻害されることがわかりました。このことが何を指し示しているのでしょうか?

 「東南アジア・東アジアにおけるキダチトウガラシの種子の休眠性」のところで触れましたが、種子の休眠性の実験から東南アジア・東アジアのキダチトウガラシはまだ完全に栽培化されておらず、栽培化の途中段階にあると考えられます。今回の日長反応性の実験からも、キダチトウガラシの小笠原諸島系統・南西諸島系統は長日条件下で花芽の分化や発達が阻害され、短日性を失っていないことが確かめられました。この結果は、キダチトウガラシの栽培化がまだあまり進んでいないことを裏付けていると考えています。このような栽培化途上にある系統の存在が、東南アジア・東アジアのキダチトウガラシの自生に寄与しているのでしょう。





(Reference)
Sota Yamamoto and Eiji Nawata. 2007.
Effects of various photoperiods on flowering in Capsicum frutescens and C. annuum. Environment Control in Biology 45: 133-142.



注:このページの写真やグラフなどは既に論文に掲載されているもので、copy right は出版社(あるいは学会)にあります。無断に転用やコピーをしないでください。

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